sohomug’s blog

住宅ライターのちょこっと仕事からはずれた話

景観条例

朝散歩をしている一角に、比較的広めの庭付き一戸建てがゆったり建ち並ぶエリアがある。そこを散歩中にふと目に留まったのが、「当地区は建築協定地区です」との看板。「住宅の新築・増築・改築を予定されている方は、下記の運営委員会と事前に協議してください」とある。

 

なるほど。確かにこのあたりの家々は雰囲気が揃っていて、近隣地域で見がちなバラバラ感がない。といっても、一斉に開発造成して同じ建築会社が建てた街並みのような画一的な風景でもない。

 

かなり昔に建てられたような家は、寄棟の瓦屋根で白っぽい吹き付け壁の外観が多いが、新しめの家は片流れ屋根に濃紺のラップサイディングなんてのもある。RC造っぽい陸屋根でかなり年月を経た感じの家もある。いったいどんな基準があるんだろう。

 

京都の市内には厳しい景観条例の敷かれた地域がある。京都らしい景観を乱さないためのものだろうけど、好きなデザインの家を建てたい人にとってはなかなか厄介なものらしく、様々な闘いや抜け道の話を取材で聞いたことがある。

 

「軒をつけなくてはならない」とのルールで、キューブ状の家の窓上にとってつけたような庇がついてたり。もちろん、上手な設計士さんはそれもうまくデザインにしているのだけど。軒をつければ和風になると考えたルールなんだろうか?どう見ても和風の結果にはなっていない。

 

ぽってりした塗り壁に小さな上げ下げ窓、アイアン飾りのついたいかにもプロヴァンス風の家なのに、屋根だけ黒い瓦というケースもあった。「オレンジ色の屋根にしたかったけど、どうしても通らなかった」と残念そうな施主さん。これも黒い瓦屋根なら和風という発想なのか?細切れのルールを押し付けるより、トータルで美しい家を建てたほうが街並みのためにもなると思うんだが。

 

京都で景観条例の話を聞くたびに、私は「校則みたい」と笑いたくなる。娘が中学のとき、「ソックスは三つ折り」という謎の校則があった。「三つ折りになってない!」と厳しくチェックする教師に対し、生徒たちは上を5ミリほどだけ折り曲げて「三つ折りですぅ~」と対抗していたらしい。校則でも条例でも、「何のためか」という大本を考えずに各論的に対応してたら、おかしなことになるよなあと思う。

 

ところで散歩途上の建築条例地域、帰ってからネットで「○○台(地名) 建築協定」とのワードで検索してみたら、ドンピシャ出てきた!協定内容の1項目めは、外観デザインなどではなく、「敷地を分割してはならない」だった。あとは主に用途(個人専用住宅か医院兼用住宅)と高さ制限、階数制限。

 

確かに近所の別エリアでは、大きな家が売却されて敷地が分割され、間口の狭い3階建てが3軒建ったりして、せせこましさと圧迫感を感じるようになったりしている。「敷地を分割してはならない」という協定が、あの地域のゆったりした街並みをつくっているんだとなと納得したのだった。